やがて表彰式が始まる。参加費無料の大会だったが、いろいろと賞品があった。カズは優勝者が受け取る賞状と盾をもらった。お金で買えないこれらのものはきっとカズの勲章となるだろう。
えんだい塾長の萱間先生も喜んでくれた。優勝報告嬉しそうなカズの顔を見て、先生にも何か賞品を置いて行けと笑わせてくれる。相徳先生も目に涙をためて誉めてくれた。
家へ帰る道すがら、みんなにいいな良いなと言われて
少し鼻が高くなったカズの小脇には立派な額縁入りの賞状がしっかり抱えられていた。シュウ君が近づいてきて一言カズに声をかける。
「俺はカズに勝ったのに、何でお前が優勝なんだよ」とシュウ
「でも、今日は8回戦ったから…」とかず
「そうだな、良いなぁカズ」とシュウ君も称えてくれる。
車の中では、妹たち二人もいいないいなを連発していた。
「何か一つのことに打ち込むとご褒美がもらえるんだよ。ありさやも何かやりなさい」
と妻が妹たちに言った。
「でもなぁ、朝場所を間違えたときは焦ったよ俺も、走ってよけいな汗もかいたし。悪かったなカズ」と俺が言うと
「あれで、走ったから、目が覚めて良かったよ父ちゃん。あそこで走ったから今日勝てたんだと思う」と
俺は二の語が告げられなかった。ただもう、じーんと来てしまって。正面を向いてハンドルを握る手だけに力を込めて、感動していた。
帰り道地元のスーパーに寄って、カズの好きなマグロを買って家に帰った。その夜は俺もご相伴にあづかりマグロの刺身で一杯やった。俺が勝ったわけではなかったが、勝利の美酒は最高にうまかった。