そろそろ、第4局も終わる頃なので、また会場に戻る。
既に会場はざわめきが始まっており、第4局も終わりに近づいているのが分かる。待っている親たちも大分慣れてきて、試合開始当初こそ静かだったのが、だんだんと騒がしくなってきている。
こっちも大分リラックスしてきたせいだろうか、周りの親たちを冷静に見られるようになってきた。いつも同じ教室に通っている子の父親が、2,3人来ているのが分かる。お互いに顔は見知っているはずだが、まだ一度も会話を交わしたことはない。子供同士は、すぐに仲良くなるが、父親同士というのは、あまり親しくなろうとは思わない。相手はどうか知らないが、少なくとも俺はこの場で親しく、よそのお父さんと語り合うことはしたくない。
逆によそのお母さんとならば親しく語り合いたいと常々思っているお母さんの一人二人は確実にいる。今日もそのうちの一人が来ていて、さっきから目線の端の方でその姿が確認できる。特に他のおっかさん連中とざわついているわけではなく、一人静かに息子の対戦を見守っている風な姿が健気で良い。髪の毛はストレートのセミロングで、背がすらっとした細面で、ジャストサイズのスラックスを着こなしている