さて、話を将棋大会の会場に戻そう。15分ほど窓の外の京成線と新京成線の分岐をぼんやり眺めて、昔のことを思い出している間に、周りがにわかにざわめいてくる。そろそろ、第1回の対戦を終えた子供たちが出てくる頃だ。子供がやるとたった15分足らずで終わってしまう対局もプロの大人がやると、最低2時間大きな大会だと2日間もかけてやる。物の本で読んだが、プロは1億手先を読んでいると言うことだ。先日の渡辺竜王と佐藤棋聖の勝負が大勝負と言われ142手で勝負がついた。プロの勝負でも、たいていは、100手前後で勝負がつく。つまり、1億手先を読むとは、100手差しの真剣勝負100万回に匹敵するわけで、プロはやはり凄いと言わざるを得ない。正直、嘘っぽいとも思う。
ちなみにわが息子になん手先まで読んでいるか聞くと、20手だと言うから、まだまだな分けだ。本日の対戦は、予選リーグが、5試合。上位8人が決勝トーナメントに進むことが出来る。カズはわりとじっくり対戦する方なので、いつも最後の方まで粘っている。子供の頃は、早差しが強くなる一つの条件でもあるから、いかがなものかとも思うが、粘り強いというのは悪くない、と親としては思う。
しばらくして、無表情で報告に来る。こう言うときに、なんと切り出して良いのかが分からない。「どうだった?」と単純に聞くのも、負け試合だったときには、傷つくだろうし難しい。顔の表情から、その結果を予想しようにも、こう言うときの息子は無表情だ。前に、対戦中に顔色が変わったり、目線の位置で、相手に次の一手を読まれるから注意しろと言ったことがある。それを忠実に守っているのかも知れない。