一息つくのも、つかの間。「急げや、急げ」とばかり、花火を持って海に向かった。花火は、地元さつきが丘のちっちゃな文房具店にある花火を、店にある丸ごと全部買ってきていたので、大量に有った。店にある花火を、圭三君がいとも簡単に「全部ください」と言ったときには、店の親父も僕も驚いた。
ちっちゃな店とは言っても、小学校のそばにある文房具店だからそれなりの品揃えがある。ロケット花火だけでも、7千発ぐらいはあったと思う。ちょっとこれは使わないだろうと思うねずみ花火も、千匹ぐらいはいたと思う。だから半端な量ではないのだ。こと、凧揚げと花火に関しては、圭三君が絡むと半端にはできない。というのが、その後の人生においても、鉄則になっている。
まあそんなわけだから、一通り花火を楽しむといい時間になってしまう。おねーちゃん達もそろそろ宿に帰る時間だと言う。宿に送っていく道すがら、聞きなれた声がかけられた。振り向くと、とんかつ屋さんでバイトしているはずの印南君だった。