そもそも、俺の泳ぎは自己流で、本を読んだり、オリンピックに出ていた米国や東ドイツチームの有名選手の泳ぎを真似していた。水をかき分けるときの手の角度とか、けり足を戻すときの太股の角度が進行方向の水流の抵抗にならない角度。とか本で読んで分かっていたが、客観的にそれを観てくれるコーチのような人がほしいと常々思っていた。そのコーチをあの美人スイマーお姉さんがやってくれたならさぞかし気分がいいだろうと泳ぎながらも勝手に考えていた。
モントリオールでは、東ドイツのコルネリア・エンダーが女子水泳界では、人気が高かった。しかし、俺はその筋骨隆々としたスタイルが好きになれず、どちらかというと実力では、エンダーよりもやや劣るが、米国女子水泳チームのババショフの方が好きだった。
女子で自由形と言うかクロールを上手に泳ぐ人に憧れていた。そもそもあこがれの発端は、中学の時、最後の年に出来たプールに一生懸命通っていた頃、クロールを実に上手に綺麗なフォームで早く泳いでいる子がいた。それを目の当たりにしてからだった。その子は、秀才で頭も良かった。その日以来、俺は水泳がうまくて頭のいい子にずーと憧れ続けている。