相変わらず外の日差しは、アスファルトを強烈に照り返し、上からも下からも容赦なく照りつける。花屋の店先に鉢植えもおいてあるので、眺める。バラの鉢植えを探してみるが、ミニバラしかなかった。変わりに、切り花の赤いバラがある。赤いバラでは、ユーロピアナ、ニコロパガニーニ、バロンジロードゥランと言ったところが俺は好きだが、そのどれもとは違って見える。なんの種類だろう。物差しで直径を測り、花弁の数も数えてみたかったが、売り子の婆様がちらちらこっちの様子を伺っているのでやめた。鉢植えのバラは高いが、その切り花のバラは、5個ほど花が咲いて、300円だった。これを挿し木にして増やせないだろうか考えてみる。うーむ、我ながらいい考え、今度試して見ようと思いつつその場を離れる。
そろそろ、第4局も終わる頃なので、また会場に戻る。
既に会場はざわめきが始まっており、第4局も終わりに近づいているのが分かる。待っている親たちも大分慣れてきて、試合開始当初こそ静かだったのが、だんだんと騒がしくなってきている。こっちも大分リラックスしてきたせいだろうか、周りの親たちを冷静に見られるようになってきた。いつも同じ教室に通っている子の父親が、2,3人来ているのが分かる。お互いに顔は見知っているはずだが、まだ一度も会話を交わしたことはない。子供同士は、すぐに仲良くなるが、父親同士というのは、あまり親しくなろうとは思わない。相手はどうか知らないが、少なくとも俺はこの場で親しく、よそのお父さんと語り合うことはしたくない。
逆によそのお母さんとならば親しく語り合いたいと常々思っているお母さんの一人二人は確実にいる。今日もそのうちの一人が来ていて、さっきから目線の端の方でその姿が確認できる。特に他のおっかさん連中とざわついているわけではなく、一人静かに息子の対戦を見守っている風な姿が健気で良い。髪の毛はストレートのセミロングで、背がすらっとした細面、ジャストサイズのスラックスを着こなしている