習志野市が主催と言うことで、カズが通っている「えんだい将棋教室…昔ながらの縁台で将棋、がその名の由来」の相徳先生と言う習志野市在住の女流棋士が、実行委員長をやっている。カズもよく知っている先生なので心強い。大会が始まるまでの時間も惜しく、子供たちは、既に会場に並べられた将棋盤に向かってそれぞれ、気の合う仲間を見つけては肩慣らしと言おうか、練習対局を始める。将棋の対局というと、難しい顔をして黙って向き合って指すと言うイメージだが、そこは小学生ともなると、わいわいがやがやとなる。机でドラムを叩くように指でリズムを取りながら、いわばラップ調に何事かほざきながら、駒を進めていくと言うのが対戦前の練習対局では見受けられる。
会場は、公民館のようなところで、学校教室の6倍ぐらいの広さに舞台が付いているホールだった。その3分の2ぐらいに机が並べられており、将棋盤と駒が50組ほど設置されている。将棋盤と言っても、ビニールクロスのようなもので出来ており、駒はプラスチック製だ。プラスチック製と言っても、文字は彫ってあり、印刷してあるだけの木の駒よりは、上等に見える。ホールの残り3分の1ほどのスペースに、パイプ椅子が並べられており、父兄が陣取っている。
こういう子供の大会は、野球をやっている子供とかもおそらくそうだろうけど、子供自身もさることながら、親の方も楽しんでいるのが大半だ。アイドルなどにまとわりつくそれと同じで、いわゆる一つの追っかけと言うそうだ。将棋の場合、他のスポーツ系の追っかけと違うのは、黄色い声で声援するお母さんというのが、少なくおとうさん、おじいちゃんという追っかけが多いことである。
それでも、やはり大多数はお母さんの追っかけで、朝早くから手作りお弁当にお茶の水筒を持ってきていると言うのには、恐れ入る。近くで話しているお母さん連中の会話が、耳に飛び込んでくる。「誰々ちゃんは今度奨励会をお受験するそうよ。凄いわよねぇ」「でも奨励会に入るには、通学の交通費も考えると結構お金がいりようなのよねぇ」などと話している。
奨励会とは、日本将棋連盟に属するプロ棋士になるための登竜門で、6級から始まる。ここから1歩1歩階段を上り詰めていき、26歳までに4段になった者だけがプロになれる。
最近世間を騒がせた瀬川棋士は、この奨励会路線では、プロになれなかったためオープンクラスでプロになった特例中の特例だ。