夜中の出発と言うこともあり、村田君には悪いが、極力寝ないようにしようと思いつつも、心地よい揺れとも相まって、いつのまにか夢の中へと落ちていった。気がつくと西湘バイパスだった。ちょうど夜中の2時頃であったが、ここぞとばかりに、お気に入りの曲をかけた。そのときばかりは、夜中の2時と言うのも忘れて、夏のさなか窓をフルオープンにしてカーステレオをがんがんと鳴らした。
そのときの曲は、メリケンかぶれの佳隆から借りて録音したドゥービー・ブラザーズの「リッスン・トゥー・ザ・ミュージック」だった。しばらく走って行きの難関の真鶴で、明け方の一番眠い時間帯に渋滞に嵌まった。運転を変わろうにも、村田君は頑として自分で運転していくと交代を受け入れなかった。圭三君の運転は乱暴だったし、僕はハンドルを握ると眠たくなる性質なので、そのほうが賢明だった。村田君はそこまで知ってかしらずか強い意志が感じられた。
夏至は過ぎていたが、お盆近くの頃で夜明けは早かった。僕は夏至に近づく頃が好きだ。陽が来る日も来る日も長くなり、いつまでも明るいし、明るい間は家に帰らないで遊んでいてもいいという、無言の掟のようで頼もしかった。逆に夏至が過ぎると、もうそれからは日一日と陽が短くなるので、何か物悲しさが付き纏った。